通学路にゴミ捨て場がある。
種も仕掛けも何も無い、ただのゴミ捨て場。
今この状況を除いては。
どういうことなのか皆目見当がつかないのだが、セーラー服を身に着けた女の子が捨てられているゴミ袋の山に顔面を突っ込んでいるのだ。
今日は生ゴミ回収の日だったはず。
鼻がへそ曲がったりしないのか。
そもそも、どうしてそんなところに顔をつっこんでいるのだろうか。
しかし、深く考えないのが家康である。
とにもかくにもかかわらないことが一番だ、と彼は腰を落として走る体勢に入った。
ワシは見ていない。決して、何も。きっと、きっと寝ぼけてただけなんだよ。
「……おい」
昨日はあまり寝付けなかったからなそうこの聞こえてくる声も全ては幻空が綺麗だなあ。
「やっと見つけたぞ!! おい、貴様!! 私と共に死ね!!!!!!!!!」
「え? え? ワシ?」
「他に誰がいるというのだ」
「あー、うん、デスヨネー」
ってあああああああああああああああああ。
ワシは馬鹿かああああああああ。
返事しちゃったー
会話しちゃったー
にしても随分と口の悪い……
ははは困ったことになった、家康はくるりと振り向き、少女の声が聞こえてきた方向に顔を向けた。

プツン。
何か、が、切れる、音が、した。

太陽の光を受けて銀色の髪が輝いている。
衣服から伸びる四肢も、首も、顔も白磁のように白い。
病気ではないのかと疑うほどだ。
とにかく可愛いという表現よりは美人、綺麗というような表現がぴったり当てはまった。
よく読む本のジャンルでは、空から美少女が降ってきたり、朝起きたら隣に見ず知らずのこれまた美少女が規則正しい寝息を立てて寝てたりとかで、ゴミ捨て場は正直どうなのか。
しかもゴミに顔面を突っ込んでいたんだぞ。
個人的に、朝起こしに来てくれる幼馴染をずっと夢見ていた。
「もう! 康君はお寝坊さんなんだからぁー私がいないとやっぱり駄目ね!!」
こんな感じうひひひひひひひひひひひ。
「人の話を聞け」
彼女に腕を掴まれたことによって、家康の意識は現実へと引き戻された。
と同時に大変なことに気づいた。
さっき……彼女は……なんと言った?
目の前の美少女は。
「一緒に死んで?」
ヤンデレならぬ殺ンデレだな。
新しすぎる。
初対面の人にここまで言われたのは勿論初めてです。
一体何がどうなってるの!!
さまざまな疑問が頭をもたげる。
それでも、それでこそ一番に口から飛び出したのはこれだった。
「えーと、どちら様……でしょうか……?」


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