No title

「会長、卒業おめでとうございまーす」
「あい、どうも」
桜の蕾が膨らみ始めた季節。
バルヨナ海青水産高校の卒業式である。
まぁ、不良高校なのでまともな卒業式など出来やしないが。
「よし、今日は折角だからいいことを教えてあげよう!」
「……いいこと?」
「制服のボタンには、第一ボタンは友人、第二ボタンは恋人、第三ボタンは家族って意味があるんだってさ。というわけで、第二ボタンちょーだい!!」
「あ、アホですか!! お前なんてもう知らねーですよ」
顔を赤くして体ごと後ろを振り向いてしまう。
あーあ、やっぱりもらえないかぁ……と思った矢先、プツンと何かが切れる音がした。
「ま、でも今日は特別ですからね」
舌を出した顔だけを再びこちらに向けると、握り締められた手から弧を描いて小さな丸いものが飛んでくる。
「……!! 会長大好きー!」
「え、ちょ、あんた抱きつかないでくださいよ!! 転ぶでしょう――うわあああああ」


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