本田さんと蘭にいさん

「開国しね……」
「いーやーでーすー!」
「ケツまで言わせろ、ケツまで」
目の前の布団ぐるぐる巻き状態で寝転んでいる菊に何度この台詞を言った事か。
頑固者げ……
「……私はこのままが良いのですよ」
「菊?」
先ほどまで本田ロール状態だった菊が、むくりと起き上がってこちらを振り向いた。
が、日光をどうしても浴びたくないらしく、布団は被ったままである。
「開国すれば、攘夷派と幕府側の対立が深まる事は明白。もう、戦は嫌なのです。あと、爺の体力も追いつかなくなります」
ただ駄々をこねとるだけだと思っとったが、こいつなりにちかっぺ考えとったようじゃ。
いつもは人に流されるだけやっちゃに。
少しだけ菊の成長を見れた気がして、頬を緩めながら軽口を叩く。
「のくてぇ。最後のはいらないんやざ」
「あら、私をいくつとお思いですか? それにね、それに……あなたとこうして二人きりでもう少し居たいのです。……駄目ですか?」
被っている布団から少しだけ顔を出して、上目遣いに見つめられた。
ほっこしのくてぇ。
ほんなこと言われれば……言われれば……
「暫くは……開国せんでおくんねの」
と言ってしまうではないか。


inserted by FC2 system